ポリモーダル反応を治療に応用するためには、痛みを伴うような強い刺激は必要なく、むしろ強い刺激は交感神経を優勢にしてしまうため有害とさえ言えます。必要なのは「傷つける」ような刺激ではなく、痛みを伴わないポリモーダル侵害受容体への確かな刺激です。
鍼灸が古来からの歴史を経て今なお愛用され発展を続けるのは、「ポリモーダル反応」という確かな理論に基づいていたからです。 今や、統合医療への世界的な潮流と供に、我国のみならず欧米において「acupuncture & moxibustion」として脚光を浴びている 所以です。
『鍼灸治療』の機序理論がポリモーダル侵害受容器に立脚している事は数々の研究結果が物語っています。今や常識と言って良いでしょう。
ポリモーダル受容器とは、身体の表面だけでなく内部にも広く分布するもっとも代表的な
侵害刺激受容器(レセプター)の事です。
鍼刺激によって、感じる得気、鍼感と呼ばれるような感覚はポリモーダル受容器が応答していると考えられています。
また、軽く皮膚に触れるといった全く痛みを感じない様な刺激でも応答することが分かっていますので、
ごくわずかな鍼刺激でもポリモーダル受容器は十分に興奮していることを意味します。
血流を増加させ、侵入した異物(侵害刺激)を押し出そう。
加えられた熱に対処しようとします。結果的に、コリや痛みの原因となる発痛物質や老廃物が浄化されます。
つらい慢性痛やシビレの症状は筋膜性疼痛症候群というひとつの病気です。近年その認知が急速に進んでおり、その治療方法をトリガーポイント治療とも呼びます。筋肉の使いすぎや長時間同じ姿勢を続けてしまうと、筋肉を包む筋膜(腱・靭帯・骨膜)に癒着、血行不良を引き起こし、トリガーポイントと呼ばれる痛みの原点を形成してしまいます。このトリガーポイントに狙いを定めて治療することが現代医学では非常に有効とされており、イオンギアはそのトリガーポイント治療のために生まれた治療器です。イオンギアはトリガーポイントのポリモーダル侵害受容器を刺激し、痛み、コリ、しびれなどの諸症状の緩和、トリガーポイントの発生に伴う関連痛を予防します。
ポリモーダル反応において、白血球の一種であるマクロファージはタンパク質で生理活性物質の一種のIL-1(インターロイキン)を産生して線維芽細胞を増殖さます。これは創傷対応と言われ、外部からの傷にポリモーダル反応に呼応して、対応しようとする一種の防御反応と考えられています。この防御反応が美容要因の一つとなります。
一方で、微弱電流療法(micro current therapy)と言う理論が有り、近年米国FDAにおいて治療法として認可されました。
細胞は主としてナトリウムイオン、カリウムイオン等の細胞内外の濃度差に従い、通常状態の休息時では細胞膜内は細胞膜外との電位においてマイナス70mVの負の電位にあります。
しかし、細胞が活性化してくると細胞膜内の電位が徐々に正方向に高まり、30mVほど高まったマイナス40mV~30mV程度でミトコンドリアが細胞の唯一のエネルギー源であるATPを生成し始め、さらにATPを消費して細胞が盛んに活性している場合は、細胞膜内電位がプラス40mVに達すると言われています。
静止電位(ミトコンドリア休息時)活動電位(ミトコンドリア活動時)
この細胞が休息中のマイナス70mVから活性中のプラス40mVとの電位差110mV相当を外部から細胞に与える事で細胞を活性化させようと言う理論が微弱電流療法(micro current therapy)です。
即ち、ポリモーダル反応による防御反応で線維芽細胞を増殖させながら、且つ、微弱電流により美容に必須の線維芽細胞のミトコンドリアATPを増産しコラーゲンを生成させるという一石二鳥を下図のように実現させます。
近年、医学界は「統合医療Integrative Medicine」として、これまでの医療が西洋医学中心の
「対処療法」に終始した事への反省から、「原因療法」へと急速に移行しています。
日本統合医療学会の解説において実際に、救命救急や外科手術などの臨床現場では近代西洋医学でしかなしえない治療が施されます。しかし一方で、慢性疾患の治療や予後の療養、さらには近代西洋医学では治療不可能と言われた症状に対して、伝統医学や相補・代替医療(※1)の有効性が数多く報告されています。
一般社団法人 日本統合医療学会
※ここで言う伝統医学や相補・代替医療とは、実質的に『漢方薬』や『鍼灸治療』の事です。
既に、我が国の医学会では、西洋医学と東洋医学の融合。「対症療法」から「原因療法」の必要性を訴え、大学病院や主要研究機関などにおいても漢方薬の採用や鍼灸科目の設置などが進んでいます。
軸索反射は、はり治療するとその周辺が赤くなる反応(フレア反応)に関係があります。これは筋血流量の増加に反応です。
そのメカニズムは、以下になります。
侵害刺激に対しポリモーダル受容器が応答、興奮する。
興奮すると中枢神経に向かう知覚神経の軸索から、枝を出して、皮膚や血管に刺激を与る。
その枝の末端から神経伝達物質であるサブスタンスPやCGRPという物質を放出する。
サブスタンスPやCGRPは血管拡張神経に作用し、血管の拡張が生じ血行が増進する。
結果として虚血性疼痛の原因となった発痛物質が排除され痛みが解消される。
鍼灸治療をすると、軽度の炎症反応が起こると先に述べましたが、炎症が起こった組織では、β-エンドルフィンやメチオニン-エンケファリンなどの内因性モルヒネ様物質が産生されることがわかっています。これらの組織で産生された、内因性オピオイドは局所の鎮痛効果に関与していることが解ってきています。
鍼灸治療をすると、軽度の炎症反応が起こると先に述べました。
炎症が起こった組織では、モルヒネに似た作用で鎮痛作用はモルヒネの6.5倍の効果を発揮し、ストレスなどの侵害刺激により生産されて鎮痛・鎮静にも働き、多幸感をもたらすβ-エンドルフィンやメチオニン-エンケファリンなどの内因性モルヒネ様物質が産生されることがわかっています。
これらの組織で産生された、内因性オピオイドは局所の鎮痛効果に関与していることが解ってきています。
主に肩こりや腰痛など筋肉のコリは筋肉の血流の減少が原因でその部分に痛みの原因、発痛物質が溜まってきます。
ポリモーダル刺激によりサブスタンスPやCGRPらが血管を拡張させ血流量が改善または増大することか解っています。
これが先に述べた軸索反射です。
血流量が改善または増大すると血流が悪いために溜まっていた発痛物質が排除され、痛みが起こっていた部分に鎮痛効果が現れます。
そして、ポリモーダル刺激は内臓にも自律神経を介して作用しています。その主なものは、四肢への刺激で迷走神経胃枝活動の亢進により胃運動の亢進が、腹部刺激では交感神経胃枝活動の亢進によって胃運動の抑制の反応が認められています。
また、心拍数の減少、腎交感神経活動の抑制に伴う血圧降下作用があります。
痛みの原点、トリガーポイント
人の筋肉にはそれを包む膜『筋膜』(腱・靭帯・骨膜)がありますが、同じ筋肉の使いすぎたり、あるいは長時間同じ姿勢を取るなど体に一定以上の負荷がかかる状態が続くと、筋肉に小さな損傷や炎症が起こり、筋膜との癒着が起きます。
この癒着が血行不良を引き起こし、神経が脳へ痛みの信号を送り始めます。これが慢性化することで神経の異常興奮状態はおさまらなくなり、トリガーポイントという痛みの原点を生み出してしまいます。
トリガーポイントはその名の通り引き金を引いて信号を脳に送り、コリとは別の、「トリガーポイントによる痛み」を生じさせることになります。こうなると、筋肉をもんだり温めたりすると、コリの痛みは取れますが、トリガーポイントによる痛みはとれません。
トリガーポイントはさらなる「関連痛」を引き起こす
トリガーポイントは関連痛と呼ばれる痛みを引き起こすことがあります。関連痛とは、痛みとなる原因が生じた部位と異なる部位に感じる痛みのことです。かき氷を食べて急冷された喉への刺激を後頭部やこめかみに痛みと誤認知してしまうアイスクリーム頭痛などが有名で、異所性疼痛、連関痛とも呼ばれます。
トリガーポイントが大きな刺激を受けたり、放置されるとトリガーポイントはさらなる激しい興奮状態になり、痛みの信号を脳に向けて連射します。するとその信号を受け取った脳は混乱し、信号がきた場所を間違って判断してしまいます。その結果、本当に痛む原因となっている場所だけでなくその周辺にまで広い範囲に疼痛を発生させ関連痛となってしまうのです。
このように筋膜の緊張状態が長引くとさらに新しいトリガーポイントができてしまい、症状がどんどん複雑化してしまいます。症状の悪化を防ぐためにも、トリガーポイントは早い段階で治療することが重要とされています。
トリガーポイントと東洋医学のツボ(経穴)は、約8割が一致していると言われています。先人たちはトリガーポイントができやすいところを長年の経験と知識からツボ、つまり経穴として治療していたと考えられています。ここ数年、鍼灸においてもトリガーポイントへの治療が脚光を浴び重要視されています。触診やエコーによってトリガーポイントの正確な位置を把握し、そこへイオンギアを貼って血流改善を促すことでさらなる治療効果の増大が期待できます。